国際的懸案となった都議会ヤジは犯人特定処罰が不可避
「産めないのか」、「早く結婚した方がいい」、「自分が産めよ」というヤジが飛ばされたと報道されている東京都議会での「セクハラ・ヤジ」事件は、国内的に大きな批判を呼んでいるが、欧米メディアが海外でも報道するにいたって国際的にもさらに大きく波紋を広げている。被害者の塩村文夏(しおむらあやか)都議は自席に戻って涙を拭う姿がメディアで流されたが、その姿は心的ショックの大きさを想像するにあまりあった。この「セクハラやじ」事件は、米国CNNが6月20日に報道した。
Outrage follows sexist outburst at Tokyo assembly meeting
By Will Ripley and Edmund S. Henry, CNN
June 20, 2014 -- Updated 1435 GMT
また、the guardian 英国ガーディアン紙も同日(6月20日)報道した。
Tokyo assemblywoman subjected to sexist abuse from other members
Incident widely criticised after sexist heckling by unidentified assemblymen thought to be from Liberal Democratic party
Justin McCurry in Tokyo theguardian.com,
Friday 20 June 2014 11.21 BST
CNNもガーディアン紙も”sexist”(セクシスト)という言葉を見出しに使っている。CNNは"sexist outburst"、ガーディアンは”sexist abuse”、である。sexist:「セクシスト」とは、英語圏で最も権威ある英語大辞典のひとつであるWebster's Unabridged Dictionaryによれば、pertaining to, involving, or fostering sexism: a sexist remark; sexist advertising. とあり、すなわち、セクシズムにつかりきった人間のことである。そしてそのsexism:「セクシズム」とは、同辞典によれば、
1. attitudes or behavior based on traditional stereotypes of sexual roles.
2. discrimination or devaluation based on a person's sex, as in restricted job opportunities; esp., such discrimination directed against women. とある。
すなわち、sexistとは、性差別主義者のことであり、racist:レイシスト(人種差別主義者)と並んで、近代文明社会においては最も忌避されるべきタイプの人間であって、欧米においてはこのことひとつだけで重責を担う人間や政治家としては失格とされており、このことだけで社会的重職や政界から追放されるべき人間だとされる。たとえば、先月米国NBA(プロバスケットボール協会)のロサンゼルス・クリッパーズのオーナー:ドナルド・スターリング氏が人種差別発言を行ったとしてNBAからの永久追放処分と罰金250万ドル(2億6000万円)を科された(毎日)ことがこうした差別発言事例に対する欧米社会の峻厳さをよく物語っている。
今回の都議会での差別的ヤジがたとえ海外で報道されなかったとしても同事件に対する冷厳な姿勢は貫かれるべきだと筆者は思うが、現実問題として、これだけ欧米の一流メディアが同事件を海外でも報道するにいたった今となっては、単なる都議会レベルにとどまらず、さらに国政レベルにおいても同事件に対する峻厳たる態度と姿勢が厳にかつ喫緊に求められるに至っていると考える。
塩村氏がヤジが聞こえた方向を示唆していることから最大会派である自民党都議が各メディアから疑いを受けている。それにもかからわず、「自民は発言者特定せぬ意向」だと19日に報道された。(朝日)
これは自民党が本事件をあまりに軽く見ていることの表れともみえる。筆者は本事件は自民党の対応次第では次の(いつになるかはわからないが)都議選で自民の勢力を激減する要素になりうると見ている。なぜならば、「子育てと働く女性を支える」としてきた自民党の綱領がまったくの表看板に過ぎないウソだったと都民国民は本事件を通じて認識しかねないからである。
一方、自民党の石破茂幹事長が「今の時点で自民党議員と決まったわけではない。特定して言っているわけではない」とはしながらも、「やじ発言者は名乗り出ろ」と報道された(産経)ことは、まことに正当かつ好ましい発言であると筆者は感じた。犯人説で最も疑われている自民党をはじめ、各党による犯人の特定と厳罰を切に願いたい。
また、やじを言った都議はこれだけ非難が国際的に大きくなっている今となっては、名乗り出ずに黙っていることは、交通事故におけるひき逃げ犯にたとえられてもしかたがないような壮絶かつ激烈な状況にいたっているということをしっかりと理解するべき時にきている。塩村都議の属する会派「みんな」では、既に声紋分析でヤジ発言者を特定する方向へ踏み出したと報道されている。(読売)
たとえ自民都議たちが「聞こえなかった」と言っていると報道されていても(テレ朝)、声紋分析をすればやがてヤジ発言者は特定されるだろう。その前にヤジ発言者は自ら名乗り出るべきである。自らの発言を隠してこそこそと逃げ回ることだけで既に政治家としての資質と資格は無い。
また、あれだけ鮮明に大きなサウンドでメディアに録音されたヤジに対して、一概に「聞こえなかった」 として犯人を名指しすることを避けることは、「犯人隠匿」に相当するかもしれないと都民国民から非難されるリスクがあるということを、すべての会派とすべての都議は重く考慮すべきでもある。
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