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  • 三谷 宏治: マンガ経営戦略全史 革新篇

    三谷 宏治: マンガ経営戦略全史 革新篇
    同じ著者の漫画ではない方の『経営戦略全史』も読んだが、マンガ版のほうがヴィヴィッドで出来が良い(と言ったら著者に怒られそうだが)。少なくとも経営戦略の全史という硬いテーマが、血の通った活き活きとしたストーリーとしてすんなりと脳に入ってくる。「マンガ」のほうは「確立篇」と「革新篇」とに分冊化されており、どちらも読むべきだと思うが、「革新篇」のほうが新しい理論家が網羅されているのでより興味深い。

  • 三谷 宏治: 経営戦略全史 (ディスカヴァー・レボリューションズ)

    三谷 宏治: 経営戦略全史 (ディスカヴァー・レボリューションズ)
    こちらを先に読んでから「まんが版」をあとから読んだが、漫画版を先に読むことをお勧めする。ただし、こちらもいずれ読みたくなるだろう。

  • 大井 篤: 海上護衛戦 (角川文庫)

    大井 篤: 海上護衛戦 (角川文庫)
    シーレーン(海上輸送路)を絶たれたならば資源を持たない日本のような海洋国家に未来はない。だからシーレーン防衛は日本にとっての最も重要な課題である。その当たり前のことが戦前の指導者たちはわかっていなかった。もの凄い情報にあふれたこの本は日本国民必読の書であると言える。 (★★★★★)

  • 長沢 伸也・石川 雅一: 京友禅千總 450年のブランド・イノベーション

    長沢 伸也・石川 雅一: 京友禅千總 450年のブランド・イノベーション
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2017年11月24日 (金)

ジンバブエのクーデターの真実 現地に電話取材

ジンバブエで軍事クーデターが起き、ムガベ政権が転覆される事態となったが、筆者はジンバブエ市民とスカイプで通話(11月21日)して現状についてきいた。以下がそのインタビューである。 (英語での通話を以下邦訳。注:なお、このインタビュー時点では、93歳のムガベ大統領は大統領を辞めることをクーデター後においても拒絶していた。)

 

石川:ジンバブエでクーデターが起きたことが大ニュースになっているよね。国民はクーデターを起こした軍司令官を支持していると伝わっているけど、それは本当なのかい?君はどう思っているのかい?

 

市民M:国民は皆喜んでいるわ。これまであまりにも政府が腐敗して経済も酷い状態になっていたから、それを打開するチャンスとして受け止めているの。私は暴力には反対よ。でも今回のクーは武力で脅してはいるものの 流血無しにことが進んでいて、それで体制が変えられるならばハッピーに思うわ。

 

石川:軍は放送局を最初に占拠した。これはクーデターの常套手段だけれども、軍司令官は「この行動はクーデターではない」と言っているそうだね。私から見ると100%クーデターだけれども、なんで軍はクーデターではないと言い張っているのかい?

 

市民M:それはね、ジンバブエを囲む3つの国:モザンビークとザンビアと南アフリカが、「もしもジンバブエでクーデターが起きたならば、自国の軍をジンバブエに侵攻させる!」と言っていたからよ。ジンバブエの軍上層部は、モザンビーク軍やザンビア軍や南アフリカ軍がジンバブエ国内に攻め入ってくるのだけは避けたいのよ。だから、実際にはクーなんだけど、軍は真っ先に放送で、「これはクーデターではない」と断言せざるをえなかったのよ。

 

石川:そういう複雑な事情があったんだね。そこまで複雑な情勢を報道しているところはなかったので知らなかったよ。

 

市民M:本当、複雑怪奇な情勢よ。

 

石川:或る報道によれば、ジンバブエ軍の司令官が中国を訪問していて、その軍幹部がジンバブエに帰国して数日後にクーデターが起きたので、もしかしたらその司令官はクーデターを起こすことについて中国の事前了解を得ようとして訪中したのではないか? もしくは、クーデターの裏に中国のなんらかの影響があったのではないかという想像もありうると書いていたけど、それは本当なのかなあ? 君は中国の影響についてどう思う? 

  

市民M:それは事実だと思うわ。だってジンバブエに対する中国の影響力は今はものすごく大きいの。司令官が中国の了解を得ようとしたことは十分考えられることだし、中国がクーにGOサインを与えた可能性もあるでしょうね。

  

石川:なるほど、それで全体像がちょっと見えてきた感じがするな。ジンバブエを囲む三国、特に南アフリカやザンビアはコモンウェルス(英連邦)だから、ジンバブエの中国寄りの立場は阻む必要があるとされているのかもしれないね。

 

市民M:それもあるわね。それと、ジンバブエはきわめて貧しい国なの。だから貧しい国民は出来るだけ外の国に行って働きたがるのよ。今ジンバブエから200万人が周辺国に出稼ぎに行っているとも言われているわ。この労働力は周辺国にとってもありがたいことなの。ジンバブエからの労働力がジンバブエに帰国するような状況はどんな理由であれ、周辺三国の労働力不足につながるので、なんとしても避けたいのよ。

  

石川:ジンバブエでは、ひどいインフレーションで、BBCによれば年率インフレーション1000%という話も伝わっている。1000%といえば、その年の1月に1ドルだったものが翌年の1月には10ドルになるということだ。それは本当なのかい?

  

市民M:ジンバブエで起きているハイパーインフレーションは事実よ。たとえば、私には幼い息子がいてオムツを買わなければならないの。でもそのオムツは2ヶ月前に5ドルだったものが今は12ドルか13ドルくらいしているわ。

 

石川:なぜそんなハイパーインフレーションが起きたのかい、その原因はいったいなんだったのかい?

 

市民M:2000年以降くらいだったかしら。通貨として皆国民はUSドルを使っていたのを政府がジムダラー(ジンバブエドル)しか使えないように米ドルを回収して流通しないようにしていったの。そうして 今では米ドルが使えなくなったの。

 

石川:それで何が起きたのかい?

 

市民M:考えてみて。たとえば私がスーパーマーケットのオーナーだったと仮定するわね。

スーパーの商品を仕入れなければならないわ。でも、商品はほとんどが海外から来るものよ。でも問題はジムダラーが海外では通用しないということなの。だからジムダラーで商品を海外から買いたくても買えないのよ。

 

石川:つまり、ハイパーインフレーションは政府の誤った金融政策から起きたわけだね。

 

市民M:その通りよ。商品が輸入出来なくなったから在庫が払底して価格が高騰してしまったのよ。

 

石川:ファーストレディー(大統領夫人)も批判されているようだけれども、その点についてはどうなのかい?

 

市民M:国民が貧困にあえぐなか、大統領夫人は巨額の金額をかけて贅沢きわまる私邸を建てたり、政治に口を出して自分の好き嫌いで人事介入したりして、国民から反発をかったのよ。

 

+++++++++++++++++++++++++

 

 以上のインタビューの内容を要約すると、以下のようになる。


* ジンバブエはもともと最貧国のひとつであったが、流通していた米ドルを駆逐してジンバブエドルだけを使わせるという誤った通貨政策によって国内経済が過度に混乱して、ハイパーインフレーションを招くこととなった。そしてその経済混乱への民衆の怨嗟が体制転覆の原動力となった。


* ジンバブエ国軍が軍事クーデターを実行しながらも、占拠した放送局から出した声明で、「これはクーデターではない」と軍幹部が真っ先に発表した背景には、「もしもジンバブエで軍事クーデターが起きたときには国境を越えて軍事介入する(ジンバブエに軍を侵攻させる)」 と言っていた周辺三国:南アフリカとザンビアとモザンビークの動向をジンバブエ国軍が危惧していたという事実が存在する。


* ジンバブエ国軍司令官が中国訪問から帰国して数日後にクーデターが起きたという事実について、中国の思惑や影響があったのかどうかは判然とはしないものの、少なくともジンバブエ国民の一部はそのことを疑っている。

 

                 Copyright © 2017  Masakazu Ishikawa 石川雅一

 

 


20171124

地図出典: Free Political Maps of Africa