津波にライフジャケット(救命胴衣)の備えを考えるべきではないか
東日本大震災から3年が経ち、津波への備えとして、様々な対策が考え出されてきている。「津波避難ビル」の指定、「津波避難タワー」の建設、「津波救命艇」の建造、そして「巨大な防潮堤」の建造などである。いずれも一定の効果が見込まれるが、避難タワーや救命艇、巨大な防波堤の整備は莫大な建造費と設置場所など(その他、景観問題や、水平線が防潮堤で見えなくなることから津波の早期発見が困難になるという意見など)の問題があり、どの程度までそれらの構造物をたくさん造れるのかどうかという疑問が残る。たとえば救命艇の場合、定員数があるわけで、もし救命艇のある場所まで津波到達前にたどりつけることが出来たとしても、その時点で救命艇が既に満員になっている可能性もありうるし、それに準じた状況で救命艇のハッチが既に閉じられていて入れないこともありうる。
2011年 津波で破壊された漁船 Masakazu Ishikawa
津波で最優先に考えるべきことは高台や高いビルなどに逃げることであるが、それができなかったケースで何ができるのかを考えると、船乗りのシーマンシップがひとつのヒントになるかと思われる。すなわち、救命胴衣の着用である。ライフジャケット(救命胴衣)の一般家庭への装備を政府などの災害対策関係者は勘案すべきではないかと筆者は考える。ライフジャケットとは、船の海難事故において、海面に脱出するときに着用する浮体構造体を内蔵したベスト服状の装備のことであり、ライフジャケットの最大の役割は着用者の気道の確保である。ライフジャケットを被災者が着用していれば、津波に万一巻き込まれても、最低限、水面に顔を出すことができて気道が確保される。すなわち呼吸することができるのである。このこと(ライフジャケット着用による気道確保)によって津波に巻き込まれてもどれだけの人が助かるかを政府関係者は真剣に考えるべきである。ライフジャケット(救命胴衣)をどの地域の家庭や学校などにどのように配備促進するのか、どこまで政府などの助成金などによって補うのかはいずれ検討課題となろうが、まずはライフジャケット(救命胴衣)の学校配備を一般家庭配備に先だってすべきだと筆者は考える。
ライフジャケットには大きく分けて二種類あり、ひとつは最初から浮体構造になっているソリッドタイプ、もうひとつは使用時に空気で膨らませるインフレータブルタイプである。航空機に乗り込むとフライトアテンダント(客室乗務員)が必ず最初に説明するあのオレンジ色のやつがインフレータブルタイプの救命胴衣(ライフジャケット)である。航空機の場合、ソリッドタイプだとかさばって収納する場所がないのと、緊急時にそのかさばるソリッドタイプを着用して狭い機内を抜け出るのはいささか困難が予想されることから、航空機内ではインフレータブルタイプが用いられている。フライトアテンダントが「機内では膨らませないようにご注意ください」とライフジャケットについて説明するのはそのためである。
しかし、津波に備えるライフジャケットを考えると、津波では水面に多くのがれきや砕かれた木材が浮かんでいることが想定され、実際の津波映像を見てもそうであることから、インフレータブルタイプのライフジャケットはそのような木材などに触れてバースト(破裂)してしまう恐れがある。したがって、津波に備えるライフジャケットは独立気泡性樹脂素材などが内包されたソリッドタイプが望ましい。
ライフジャケット(救命胴衣)は普及が安価で出来て、被災時の人々の気道確保という実用性から見ても、政府の災害対策関係者には是非真剣に勘案していただきたいと思う。南海トラフ大地震の可能性も言われ始めている昨今、これは東日本大震災被災地のみの問題ではなかろう。
最後に、あらためて津波犠牲者の方々のご冥福を祈念いたします。 拝
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